お題3「木陰で読書」
リハビリその3。シゲタツ。個人的に、シゲ→たっちゃんの呼称表記はひらがなが好きです。
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そーいうん似合いすぎて、たまに厭味やな。
「…はあ?」
読書の邪魔をされたせいか、からかう口調が気に入らなかったのか、その両方か。
昼休みを読書にあてるなどという優雅な過ごし方が無理なくしっくりと馴染む容姿に似つかわしくない不機嫌な声を上げた水野が睨み上げてくる。
しかしその色の薄い一対の瞳が佐藤に向いていたのはほんの数瞬で、すぐに視線は膝に開いた読みさしの本の上に落とされた。
「シカトかい」
「…続き気になるから、早く読んじゃいたいんだよ」
文字を追う目は上げないままでも返事が返ってきたことに一応は納得して、邪魔するのはやめとこうと佐藤はすとんと腰を下ろす。
よく晴れた真昼、心地よい風も吹いていて、腹も満たされていて。黙々とページを繰る指先や伏し目がちな横顔を眺めながら、眠くなるには格好のシチュエーションに抗う気もなくまぶたが重くなってくる。
「たつぼーん」
「なに」
「足のばして」
「なんでだよ」
「えーから」
よほど読書の邪魔をされたくないのか、思いの外素直に水野の立てていた膝が伸ばされる。
すかさずそこに向かって体を倒した。
「ちょ、こらバカシゲ!」
「チャイム鳴ったら起こしてな〜」
ハードカバーの背表紙くらいは覚悟の上で、でもできれば角は勘弁してほしいと思いながら拝借した水野のひざ枕だったが、痛打の代わりに降ってきたのは、呆れたような小さなため息と頭の上に軟着陸したらしい硬い表紙の感触。
書見台にされるくらい安いもんだと緩んだ口元をごまかすために、佐藤は大きくひとつ、あくびをした。
青春10のお題
- 屋上の指定席
- いつもの寄り道
- 木陰で読書
- 片思い×片思い
- 放課後の待ち合わせ
- 木漏れ日の下
- 曲がったネクタイ or 外れたボタン ≪選択式≫
- 一人にして
- 早朝の教室
- 夏の終わり
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