無題(久+風)

 携帯30分一本勝負の久+風。ふゆっぺじゃないよ監督だよ。
 続き書いて体裁整えられたらサイトに移します。掛け算になるだろうか……。





 攻守の切り替えに合わせて敵陣へ攻め上がろうと180度ターンしたところで、鋭い痛みが足に走った。
「いって…!」
 バランスを崩して倒れ込んだ自分の元に駆け寄ってこようとするチームメイトを制し、足攣っただけだから!と告げて風丸はラインの外に出た。
 とにかく痙攣する脚をどうにかしなくてはとピキピキ走る痛みに顔をしかめながらスパイクを脱ぐ。
「いててててて」
 攣った右足の親指をぐっと甲の側へ反らし、そぅっと離す。
「…ん、大丈夫だな」
 足の指を曲げ伸ばしして再びピキッと来ないことを確かめて、スパイクを履き直そうと伸ばした手に、すっとドリンクのボトルが滑り込んだ。
「サンキュ、って、監督?」
 てっきりマネージャーかチームメイトのだれかだと思って上げた視線の先には、予想に反して監督である久遠が立っていた。
電解質が不足すると脚を攣りやすくなる。飲んでおけ」
「はい、ありがとうございます」
 手渡されたボトルの中身は水ではなくスポーツドリンクだった。芝を傷めないため、タッチライン際に置いてある給水ボトルには水が入っている。ということはベンチに置いてあるボトルをわざわざ持って来たということになる。
 もちろん監督みずから選手の管理のために細々としたことをするのは珍しいとはいえありえないことではない。しかし、言葉数少ない、選手たちへの関心があるのかないのかいまいちわからない、そんな印象ばかり先立つ久遠が取る行動としては、正直、意外。
 面食らいつつも風丸が水分補給を終えたのを見届けると、久遠はピッチを駆け回る選手を見遣って、
「他の者にも、水分だけでなく塩分と糖分を適時摂るように伝えてくれ」
 今日は暑いからな。そう言った久遠の横顔が一瞬厳しさを潜めた気がして、風丸は軽く目を見張った。